2013/03/12



妙に大きな鳥が電線に留っていた。
カラス?違う。ハトよりは遥かに大きい。
ノスリかと思ったが、それにしては黒っぽい。
トビか。いつもは電柱のてっぺんなのに珍しいな、と思いながら
ちょうど向き合うあたりで自転車を停めたらばさりと舞い上がった。
紛れもなくトビだった。

そのあとこれまで足を踏み入れたことのない一帯を巡ってみた。
ふとしたことで、そこに行ったことがないと気づいたからだ。
しょっちゅう通るふたつの街道に挟まれた小さな一角。
なんということはない町だけど、見たことのない町だった。

その足で久しぶりに町外れの喫茶店に顔を出した。
フロアには小さな着物が飾られており、俄に華やいでいた。
ママさんに初孫ができたそうだ。
女の子。おめでたい話だ。
でも小さな着物はとくに赤ちゃんのものではなかった。

それからしばらくイヌやネコがいかに素晴らしいかについて話し込んだ。
「私がイヌにしてやるよりもずっと多くのことをイヌはしてくれているんです」
そのとおり。ネコもそうですね。
「飼ってるって言い方は嫌ですし、エサなんて言わないんです」
まったくですよ。まったくです。

店を出てすぐに、赤ん坊を重そうに抱いて歩いてくる若いお母さんとすれ違った。
日射しが眩しいのか歩くのが辛いのか、少し険しい表情をしていた。
がんばれ、がんばれ、と心の中で声をかけた。