コブシの花を好きになったのはいつだろう。
二十歳を過ぎ、よく山歩きをしていた頃だと思う。
早春の、まだ色彩の乏しい景色の中で、ぽっとそこだけ浮き立つように白く輝いているあの樹はなんだろうと思った日。
少し近づくと、無数の灯を載せた燭台に見えた。
その後、高石友也とナターシャセブンの歌に出てくるコブシはあの樹だと気づいたんだ。
生きている鳥たちが 生きて飛び回る空を
あなたに残しておいてやれるだろうか 父さんは
目を閉じてご覧なさい 山が見えるでしょう
近づいてご覧なさい 辛夷の花があるでしょう
(「私の子供たちへ」 作詞・作曲:笠木透)
この歌は子供いないのに泣けた。
いまは子供がいるからより一層現実味がある。
残してやらなければ。